もっと収入を伸ばしたい・入った会社があまりにもブラックだった・出産を機に会社へ戻りたくても戻れなくなった等退職する従業員には様々な理由があります。優秀な人材ほど、先を見て行動するため、会社から離れていってしまいます。この記事では、優秀な人材が離職しないためにとる戦略について解説していきます。 ぜひ最後までご覧ください。
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優秀な人材が離職しないために
会社を退職する理由にはある特徴があります。
詳しくはこちらでまとめているのでご覧ください。

簡潔にまとめると、
①入社前と想像していたものと違った(働き方・賃金・昇給・職場の雰囲気・教育せず放置等)
②身の回りの環境の変化(出向・結婚・出産育児等)で続けられなくなった又はより良い環境を求めた
の2点が会社を退職する大きな理由となります。
優秀な人材ほど、異変を察知する能力が高く、危ないと思ったらすぐに離職してしまいます。
給料に関しては、ない袖は振れないと思いますので、中小企業で改善するのは難しいかもしれません。
しかし、労働条件や職場の人間関係、新入社員の研修、そして、明確な評価基準については改善の余地があるでしょう。
結論から申し上げますと、優秀な人材を手放さないためには
- 労働環境の整備
- 体系的な研修制度の制定
- 明確な評価基準の作成と評価への反映
を行いましょう。
では、具体的にどうすればよいのか。
それぞれ詳しく見ていく前に前提条件を確認していきましょう。
前提として
労働条件
労働条件とは
「労働契約の期間、仕事をする場所、始業・就業時刻、賃金など」
のことをいい、労働基準法で使用者(会社)が労働者に対して明示することを義務付けています。
労働基準法15条
具体的には必ず明示しなければならないことと、定めている場合に明示しなければならないことの2種類があります。
必ず明示
- 契約期間に関すること
- 期間の定めがある契約(1年契約、3か月契約 等)を更新する場合の基準に関すること
- 就業場所、従事する業務に関すること
- 始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
- 賃金の決定方法、支払い時期などに関すること
- 退職に関すること(解雇の事由を含む)
- 昇給に関すること
定めている場合に明示しなければならないこと
- 退職手当に関すること
- 賞与などに関すること
- 食費、作業用品などの負担に関すること
- 安全衛生に関すること
- 職業訓練に関すること
- 災害補償などに関すること
- 表彰や制裁に関すること
- 休職に関すること
退職理由に関する内容で言えば、
・期間の定めがある契約で更新されなかった
・社員になって安定した収入を得たいのに社員に登用してもらえなかった
・会社の慣習で就業規則に書いている時間より1時間早く来て雑用しなければならなかった
・残業時間が多すぎて体がもたない
・週休2日制と聞いていたのに、完全週休二日制でなくて休みが思ったより少なかった
・年休を使いたいけど、休みにくい雰囲気がある
・上司のハラスメントを見てしまった
・なかなか昇給してもらえなかった
・賞与、退職金がない
等の理由を改善することが労働条件の改善につながります。
職場の人間関係

職場の人間関係を理由に退職する人は数多くいます。
厚生労働省では、「令和2年度個別労働紛争解決制度の施行状況の結果」が掲載されています。
内容を見ると、令和2年度において
- 労働相談件数 過去最多の1,290,782件
- その内、民事上の個別労働紛争相談件数 278,778件(全体の約13%)
内訳として多かったものが
①いじめ・嫌がらせ
②解雇
③労働条件の引き下げ
ということがわかっています。
つまり、
- 労働問題は年々増加している
- 内容として一番多かったものはハラスメント(パワハラ・セクハラ・マタハラ)
の2点が大きな問題として取りあげられるでしょう。
職場の人間関係を改善するだけで多くの労働問題が起きずに済んだ、ということが分かります。
新入社員の研修
研修として行われるものは大きく以下の2種類です。
① Off-JT
②OJT
これらの研修を行うことで人材開発支援助成金を活用することができますし、人材開発支援助成金をの特定の訓練修了後に正社員化した場合、キャリアアップ助成金がの助成額が加算されます。
①Off-JT
「Off The Job Training」を短縮した言葉。
OJT研修と比較して使われる研修法です。
実務の場でなく、社外の研修を受けたり、ビジネスを行う上で必要な知識やスキルを得たりするための時間です。
例 新入社員研修、リーダー研修、管理職研修、ハラスメント研修、プログラミング関連の研修 等
Off-JTの特徴として、行っている間は、通常業務を行うことができない、ということがあります。
しかし、座学で知識をためるという作業は、社会人としてレベルアップするためには必要な研修ですので、積極的に活用したいところです。
厚生労働省が行っている「能力開発基本調査」という調査があります。
これは、国内の企業・事業所と労働者の能力開発の実態を明らかにし、今後の人材育成施策の在り方を検討するための基礎資料とすることを目的に、平成13年度から毎年実施しています。
令和2年度の結果から、約70%の企業がOff-JTを実施しており、そのうち、半数の企業は教育訓練費用を負担しています。
②OJT
「On The Job Training」を短縮した言葉。
Off-JT研修と比較して使われる研修法です。
企業や組織の中で実務に取り組みながら行う育成方法のことです。
例 営業の同行、ロールプレイング、プレゼンの仕方、架設工事のやり方 等
OJTの特徴として、その業務にあった知識や経験を個々人に合ったスピードで養っていくことができます。
実践的、かつ効率的な教育制度であるため、新人を早期に戦力とするためには必要な研修です。
また、指導者側にもマネジメントスキルが身に付き、低コストで実施できることも特徴の一つです。
「わからないことがあったら聞いてね」といって放置しているOJT研修があるのも事実です。
明確な評価基準
ここで言う「きじゅん」という漢字は大きく2種類あります。
基準 : ものごとの基礎となる標準=守った方がよい手本
規準 : 従うべき規則=守らなければペナルティーがあるルール
しかし、評価の場合は意味合いが少し変わってきます。
評価基準、評価規準の意味は以下の通りです。
評価基準 : 到達目標に対してどの程度達成できたかを判断する指標
評価規準 : 到達目標
つまり、評価規準が最終的なゴールであり、評価基準はゴールへ向かうための中間のゴールということになります。
例えば、「年間1000万円の売り上げを作る」ことを「評価規準」とします。
すると、達成できた、できなかったの2分割で評価されることになります。
年間999万円の売上をつくることができていても「できなかった」と評価されるわけです。
ここで登場するのが「評価基準」です。
・月間売上100万円達成し、継続する
・月間売上を増やすために訪問回数を増やす
・商品を買ってくれるお客様のことをリサーチする
等、最終の目標である「年間1000万円の売り上げを作る」までのステップを細分化して、
それぞれのステップを目標として設定したものが「評価基準」です。
優秀な人材が離職しないための戦略
労働環境の整備
先述したように、優秀な人材は違和感を敏感に察知します。
基本的な労働法はしっかりと守りましょう。
具体的には、
- 割増賃金は確実に支給する。
- 残業時間を減らす
- 粗悪な慣習を見直す
- ハラスメントは見逃さない
等が挙げられます。
特に、パワーハラスメントについては、令和4年4月から中小企業にもパワハラ防止法が適用されます。
労働環境が整備され、従業員が気持ちよく仕事をすることができるようになると、離職率が下がるだけでなく生産性が上がるかもしれません。
生産性があがると、受けられる助成金の額が増えます。
生産性要件についてはこちらの記事をご覧ください。

体系的な研修制度の制定
よくあるOJTの失敗例として、
・とりあえずやってわからなかったら教えて
・感情任せに怒ってしまう
・答えを全部言ってしまう
等があります。
OJTを行うにあたって必要なことは次の4つです。
- 作業の目的を理解してもらう
- やって見せながら説明する
- 一度やってもらう
- フォローする
1.作業の目的を理解してもらう
①計画を立てる
計画もなしに教えても伝わりません。
達成する目標を決め、どのようにレベルアップしてもらうかの計画を立てることが先決です。
そのために、まずは
- 業務に必要なスキルは何か
- 求められるレベルはどれくらいか
- どのように習得するか
ということを職場全体で考える必要があります。
②スモールステップを作る
以上の内容を元に目標を決めることができたら、次はスモールステップを作ります。
どのレベルまで習得できているかわかるように計画表に書き起こしましょう。
細かいスモールステップを作ると、目標達成までの道のりが見えやすくなり、達成しやすくなります。
マクドナルドは1年で未経験を副店長レベルまで育てるプロセスがありますが、秘訣は細かいスモールステップを何段も重ねることにあるそうです。最初は誰でもできる内容から始め、能力や意欲が成熟するにつれて行う業務内容や責任もレベルアップしていくので自然と育っていくそうです。
※留意点
- 部下に教えてできない場合は、教え方に問題があります。できない人のせいにせず、どうすれば伝わるのかを考える必要があります。
- 部下のレベルに応じて伝え方や伝える内容は工夫しましょう。知識や経験豊富な方に何度も細かく教えると信用されてないと勘違いされるもとになります。
- OJT研修においては、心を開いてもらうことが大原則になります。
- 相手の反応を見ながら具体例をまぜて説明したり、体系立てて順序良く説明したりするなどして継続的に何度も行うことが非常に重要です。あきらめずに怒らずに行いましょう。
- 正確に伝えることがその後の作業効率に響きます。きちんと内容が理解できているかを確認するために質問を投げかけて考えさせたり、質問させてみたりしましょう。OJTの一番の目的は部下の独り立ちです。
2.やって見せながら説明する
一見は百聞に如かず
何度も聞くより、見た方がイメージがわきます。
ただし、この段階が一番大切です。
最初に見るイメージですので、後の行動に大きく影響します。
ですから、具体的な業務イメージがもてるように内容や手順、業務を行うときのポイント等を明確に伝えましょう。
また、教える人によってばらつきが出てはまずいので、OJTを行う前に指導する内容はきちんと体系立てて整理しておく必要があります。
なお、日常的に模範を示して行うという方法もあります。
責任感や忍耐力、ヒトに対する思いやり、プロ意識等は日々の行動からにじみ出るものです。
管理者が日々率先して指導する内容通りに行動することで部下が感化されていく、ということも良くあります。
※留意点
- 一方的に教えるのではなく、時には「今の聞いてどう思う?」「質問はある?」と質問を交えると良いです。
ただし、わかっていなくてもそれを知られたくなかったり、すぐに質問内容が思いつかずに「特にないです」と言われることがあります。本当に理解できているかどうかは次の「やってもらう」時にしっかり見定めましょう。
3.一度やってもらう
実際にその業務を一人でやってもらいます。
不安に思っても、まずは黙って行動を見守ります。
正しいやり方を指導し、その後反復練習を行いながら都度適切な助言と相談を伴った指導を継続することが重要です。
4.フォローする
一度やってみた結果、できたこと・できていなかったことについてフィードバックしましょう。
ここで一番やってはいけないことは同僚やお客様がいる前で指導したり威圧的な態度をとったりすることです。
人は安心感が得られる場所でのみ成長することができます。
「失敗しても大丈夫」
そう思ってもらえる環境をつくることができて初めて研修が成功します。
指導する際にもいくつかポイントがあります。
①ポジティブなフィードバックを行う
人は自分の失敗から多くを学び取ることができません。
自分ができたことに着目し、それをフィードバックしてもらうことで少しずつ定着していきます。
ですから、うまくできていたことに着目して伝えるようにしましょう。
うまくできていなかった部分に関しては、実際にできていなかった部分を説明し、原因をヒアリングしながら一緒に考え、うまくできる・納得するまで繰り返し教えます。ここで焦らず丁寧に指導することが重要です。
②基本は叱らない
叱ってもできるようになりません。恐怖心を植え付けるだけです。
また、「怒る」と「叱る」も違います。
感情的になってしまっては、伝えたいことを伝えることが難しくなります。
どうしても叱る場合は、
・事実のみ
・冷静に
・妥協やためらいの気持ちを捨てて
明るく叱りましょう。また、職場の規律づくりを乱すような行為を行った場合は、人前で叱るという公平さが必要になることもあります。
③ほめるときは事実のみ
抽象的なことを褒められても、「機嫌取りに来ている?」と勘繰られます。
どうして褒めているのか、事実とその価値についてのみ伝えるようにしましょう。
直接ほめることがほとんどだと思いますが、第3者を介して伝わった方が信憑性が増す”ウィンザー効果”というものがあります。
ただし、悪口も信憑性が増してしまうので、人を挟んで伝えるのはほめるときだけにしましょう。
以上の4つのことを意識してOJTを行うと効果が高まり、会社に対して信頼感を持ってもらえるようになるので離職率が下がります。
明確な評価基準の作成と評価への反映
「結局管理職に好かれてるかどうかで決まるんでしょ?」
教員時代の私はそう感じていました。
実際に管理職の主観的な裁量一つで評価が決まってしまう企業も少なくありません。
評価基準は客観的で明確な基準があって初めて意味のあるものになります。
また、その基準があっても社員に実際に適用しなければ意味がありません。
客観的で明確な基準を用いて評価されることで初めて社員にとってのモチベーションにつながるのです。
明確な基準を作る際には大事なポイントが一つあります。
それは、人事評価はヒトを育てるためのものである必要がある、ということです。
会社が良い方向に進むためには必ず人の力が必要になります。
モノ・サービスや金に関しては大企業に太刀打ちできず、マネされてしまう可能性もあります。
しかし、ヒトに関してはなかなかマネすることができません。
さらに、そのヒトに価値づけできれば、お客様はファンでいてくれるようになり、この先もずっと応援してくれるでしょう。
そして、人を育てるための評価基準である必要があれば、経営の戦略に紐づいていなければ意味がありません。
「〇を達成するために△のスキルや□ができる人材にそろわないとけない」
このような方向性を元に評価基準を作成していく必要があります。
最後に
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
人事評価制度を作成する前に、土台として会社が安心して経営を行うことができる基盤を整える必要があります。
人は安心感を感じなければ成長できませんし、労働問題を抱えながら人を育てるのは難しいからです。
弊社では、ヒトの成長を目標とした人事評価制度を作成しております。
人事評価や育成、人事戦略等に関してご意見・ご質問等ございましたら、コメントしていただくか、 お問い合わせフォームからご質問していただくか、弊社HPより直接お伺いください。
また、離職率を下げると受けられる助成金があります。詳しくはこちらの記事にまとめております。

従業員が安心して働ける会社づくりの一助になることができれば幸いです。
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